桜ほうさら

宮部みゆきの「きたきた捕り物帖」が気になっていたのだが、「桜ほうさら」と「初ものがたり 完本」が出てくると聞いて、もう一度読み直してみることに。

と思っていたのだが、待てなくて「きたきた捕り物帖」を先に読んでみた。結果的にそれがよかったのかもしれない。「桜ほうさら」の主人公古橋笙之介が住んでいた部屋に「きたきた捕り物帖」主人公北一が越してくることになるのだが…。

長屋の部屋の前住人、笙之介の紹介のされ方が、あれ?と。笙之介ってそんな死に方だった?長屋の人たち、記憶にあるようなないような。と読めば読むほど疑問がわいてくる。

桜が満開の今、ページをめくるたびにページ上部にほどこされた桜のはなびらがひらひらしているのもちょっと楽しい。

田舎の藩で古橋家の次男として学問に勤しんでいた笙之介だったが、父親の藩の財政の収賄容疑による自刃で生活が一変。周りの思惑が重なり、あれよあれよという間に江戸へ出立することになる。

裏側の密命は、温厚な父親を偽の収賄罪に追い込む証拠となった、父そっくりの字を書いた代書屋を探し出せ、というもの。

なかなかヘビーな事情や悲しみを抱えていた笙之介だったが、江戸でも父親似の温和なところは変わらず、飄々と過ごす日常が描かれている。

長屋の人々、写本の仕事関係、藩の密命関係、桜の精かと間違えた和香との出会い。すべてが縦に横に交錯しながら飄々と過ごしていいるように見えた笙之介があちこち焚き付けられながらも、全てに熱を帯びてラストスパートに向かう感じが男、笙之介、さすが格好いい。

ほぼ内容を忘れていたので、すべての事件が黒幕を暴くものかと意気込んで肩透かしみたいな繰り返しを感じたりもしたが、もちろん伏線は随所にちりばめられておりきれいな線をたどっていくのも気持ちがいい。

悍馬な母親に兄ほど目をかけられず育った笙之介が和香に母親に似た部分を探して楽しんでいるところもなんだかほほえましい。二人の可愛らしい恋の進展をがんがん周りがとりまとめていく感じも面白い。

個人的には太一の、「あんなバカな姉ちゃんでも、姉ちゃんは姉ちゃんだから」と乙女心に鈍い笙之介との押し問答がなんともいいと思う。

もういちど「きたきた捕り物帖」を読むつもりだ。太一って誰?て思ってたけどバックグラウンドが変わると長屋がどんどん生き物に思えてきそうだ。

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